神通・四十業処・悟り体験など小テーマ集~11月原始仏教講座を開催

小林紀生

2021年11月14日 20:30




11月の原始仏教講座。
今月は小テーマ集です。

で、レジュメも19ページに及ぶボリューム感です。実質、最後の原始仏教講座になりますので、今までお伝えできなかったことをギュっと詰め込みました^^

が!予定していた内容の全てをお伝えすることはできず、大事なことは来月に繰り越しにしたいと思います。

で、今月は、

・清浄道論における神通の種類と発動のさせ方
・清浄道論における「禅定」と種類、具体的なやり方
・仏教の神通力とその他の通力との違い
・念(サティ)の複数の意味と正知・覚知
・仏教の悟りとアドヴァイタなどの悟りとの違い
・原始仏教における人生を良くすること・創造性について
・ダンマを実習していれば性格・短所・運命は必ずよくなるのか?

この辺りのお話しとなりました。

通常は言及されない(されにくい)テーマでありますが、あえて言及してみました。


◆デリケートなテーマ「神通」
特に「神通」に関しては、ほとんど言及されないものの大切なテーマかと思います。

そもそも、かつてこの神通に魅了された某宗教団体が毒ガスを撒くという凶行に及び、その結果、神通などの不思議なことへの警戒感や嫌悪感を抱きがちになっているように思います。

後述しますが、この事件以外にも、神通に魅了されてしまうといろいろと問題が出てくることも見聞し、神通に対してあまり良い気持ちを抱かないことが多い印象です。

そのため神通の話しは半ばタブー視されている感があります。

けれども適切な理解があればむしろ健全に向き合うことができると思います。この辺りの健全な理解のためにも、タブーになりがちな仏教の神通についてお話しいたしました。

そもそも「神通」という不思議な現象に関しては、時として魅了されてしまう場合があります。

が、神通に魅了され関心が強くなってしまうことは、モノに例えると、お金や珍しアイテムにとらわれることと本質は同じなんですよね。

それが精神の産物なのか、物質の産物なのかの違いだけです。精神的な産物の「神通」に著しく惹かれるのは、お金やモノにとらわれてしまうことと本質は同じになります。

この理解はとても大事だと思います。

また神通は、それが体現できたりすると「解脱している」とかの勘違いをするケースも出てきます。

先ほども欠きましたが、過去には、毒ガスを巻いた教団が、まさにこの暗黒面に陥り、「不思議な能力があるから聖者である」という短絡的な見解を抱き、ポアという悪魔的な考えを掲げて世界中を震撼させたことは決して忘れることはできないでしょう。強烈な反面教師でもあります。

こうした誤りに陥らないためにも、神通に対して適切に理解することは大切ですね。で、実のところ神通を発現するのは稀であるということです。また神通があるからイコール解脱者ではないということ。これらは非常に大事な理解です。

で、こうした知見は、やはり仏典等を読むことで得られる理解ですね。だからテキストを読んで理解することも大事になります。

で、パーリ仏典 相応部 第Ⅷ篇ヴァンギーサ長老の集成 第7節雨期あけの集まり「スシーマ経」(阿含経 雑阿含経45-15「自恣経」)には、阿羅漢となっても神通が体現できるのは約25%とあります。

全ての解脱者が摩訶不思議な能力を持っているとは限らず、むしろ僅少ということですね。

神通とは、まさに心が浄まる中での「ギフト」「副産物」ということですね。で、「不思議な能力があるから解脱している」ということは無いということです。ここは非常に大事な理解です。この理解は欠かせません。

でありませんと、不思議な能力を持った人が大聖者であるとか、ズレた仏教観を抱くなど、おかしな思想となってしまうことが往々にして起き得ます。

過去に起きた大事件や、不思議な能力に魅了されてしまうケース(スピリチュアルに多い)を見聞して、嫌な思いを抱きがちな昨今であるからこそ、適切な向き合い方と伝統的な理解が大事になるかと思います。

そのためには神通に関する伝統的な教えを知り理解することは、むしろ必要になるかと思います。そこでほとんど知られていないであろうことをご紹介いたしました。

で、今日お伝えした内容は
・禅定によらないものも含む10種類の神通
・神通の種類
・神通の発動のさせ方
・神通を体現するための条件
といったことですね。
まったくといって言及されない内容ですがご紹介いたしました。


◆瞑想の仕方「四十業処」
あと原始仏典・清浄道論に伝承されている瞑想(禅定)に入る瞑想の仕方としての「四十業処」もご紹介させていただきました。

清浄道論にある通りでして、「善なる心」の一境性が心の統一であって、「安楽」が心の統一にとっての要因となるというのが端的に瞑想の要諦を伝えていますね。

一般的に「集中」というと、一生懸命に集中したり、緊張を伴うガンバリズムなやり方に思われがちですが、実際はその逆であって、安楽(リラックス)の延長に起き得ることということですね。

ここはとても大事なことだと思います。

で、安楽(リラックス)の感覚がら、「体感としての善感覚」も生じます。で、このことは「善なる心の一境性が心の統一」ということにも通じますし、安楽(リラックス)が基本であることがわかってまいりますね。

実際、瞑想は「安楽(リラックス)」が大事な要諦になってまいりますね。

こうした土台があって、四十業処のほか、各種の瞑想のやり方があると思います。

近年ではイメージを使った瞑想もありますが、伝統的な仏教の瞑想ではイメージを使ったやり方は無いということですね。

仏随念、法随念、僧随念、布施随念、天人随念といった瞑想も伝承されていますが、これらは「イメージ」ではなく、これらから感じられる徳を対象にしているということでして、やはり体感・実感が大事であることがわかってまいります。


◆その他
あと
・念(サティ)には随念と正知・覚知の2種類があること

・仏教の悟りとアドヴァイタなどの悟りとは全く違うこと(悟りと一瞥体験との違い)

・原始仏教における人生を良くすること・創造性の発揮、性格・短所・運命がよくなること。

についてもご紹介。


11月の講座は実質最後となります。そこで小さなテーマでありながらも大事なことをご紹介いたしました。が、小さなテーマといいながらも、実際は大きなテーマでもありましたね^^; 

限られた時間の中でしたが、ほとんど知られていないレアな情報もありましたので、ご参考になれば幸いです。

来月の12月は仏教史となります。仏教史は、仏教を理解する上において大事な知識・知見になります。仏教史を知っている知らないとでは、正直なところ天と地の違いがあるくらいだと思っています。重要な知見が仏教史にはあると思っています。


◆11月の原始仏教講座
観念的になりがちな原始仏教の教えを実践ベースにかみ砕く勉強会。

次回は第12回目(ラスト)は12月12日(日)
詳細はこちらをご覧ください。
https://healingmusic.hamazo.tv/e9286310.html

12月は「仏教全史【インド・東南アジア・チベット・中国・日本】」となります。

インド・東南アジア・チベット・中国・日本における仏教史をポイントを押さえてご紹介いたします。また時間があれば1年の講座のまとめもいたしたいと思います。

毎回毎回、見やすくわかりやすいレジュメも用意しています。

ご興味のあります方は、お待ちしております。

小林紀雄

◆2021年 原始仏教講座の詳細
https://healingmusic.hamazo.tv/e8982701.html

◆申込み:申込みお問い合わせは、vipassa65@gmail.com まで



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