「チャルーン・サティ」。
手動瞑想のことですね。
プラユキ・ナラテボーさんをはじめ、
カンポン・トーンブンヌムさんらによって
教え伝えられた感のある「気づきの瞑想」ですね。
カンポン・トーンブンヌムさんは、2016年に60才で
お亡くなりになられています。
著書「気づきの瞑想で得た苦しまない生き方」は、
ご自身の苦労と悩みを克服されていった次第でもあり、
瞑想のマニュアルとしても優れた名著だったりします。
プラユキさんをはじめ、カンポンさんが伝える「チャルーン・サティ」。
日本では「手動瞑想」と言われていますが、
「気づきの開発」という意味になります。
考案者はルアンポー・ティアン師(Luang Por Teean)。
元々在家の方で、ご商売を生業にされていたものの、
在家の身の46才の年に、特定の師に就くこともなく自力で、
しかもわずか数日で大悟され、さらに悟った後の49才で
出家して比丘になったという異色の方だったりします。
その後、ルアンポー・ティアン派の始祖ともなります。
実は日本では知られているようで知られていない
天才でいらっしゃいます。
お写真を見ると、徳行の高い長者の風格があります。
今日は、そんなルアンポー・ティアン師のお話しです。
ルアンポー・ティアン(Luang Por Teean)師は
1911年9月5日(日本では明治44年)、
タイ東北部ルーイ県の小さな村に生まれています。
タイとラオスの国境近くではないかと思います。
このルーイ県は「イーサン地方(東北部)」と呼ばれ、
タイでも極貧地域といわれる所です。
貧しい地方。
しかも「田舎者」とか「言葉が違う」とか言われて
揶揄されたり差別されることもある、
何かと厳しい地域だったりします。
ちなみにアーチャン・チャーも、
イーサン地方のお生まれです。
ルアンポー・ティアン師は、子どもの頃に父親が亡くなり、
母親と一緒に農業を手伝うようになっています。
そのため教育も充分に受けることができなかったようです。
11才のときに、村の僧院で沙弥。
このときラオスの言葉や昔の文字を学んでいます。
タイ語ではなく、隣国のラオスの言葉を学んだという辺りに、
生育環境がしのばれましょうか。
ちなみに瞑想の仕方も、この頃より学ぶようになったそうです。
その後、いったんは自分の家に戻ります。
20才になったときに、伝統にしたがって出家して僧侶になります。
6ケ月間、伯父と一緒に瞑想の実習と研究。
その後、再び在家に戻って22才でご結婚。
3人の息子を授かります。
その後、在家でありながらも、村における仏教活動の責任者となって、
波羅蜜を重ね(徳を積み)、瞑想修行を続け、
次第に尊敬される存在になっていったといいます。
ルアンポー・ティアン師は、商売を生業としていたようです。
仕事柄、人との出会いが多かったからでしょう、
優れた瞑想家にも会う機会があったようです。
しかしながら在家で瞑想修行を重ねていたものの、
また様々な瞑想を行っていたものの、
自分の心にある「怒り」を、どうしても消すことが
できなかったといいます。
そういった思いがある中、やがて仏法を真剣に求める気持ちが
昂じてきて、1957年の誕生日を迎える前の46才の年、
「真理をつかむまで家には戻らない」という固い決意の元、
瞑想修行に専念するために家を出ます。
とはいっても「出家」でもなく「求道者」として家を出ています。
身分は「在家」のままです。
で、当時、ラベリングしながら心と体の動きを観察する瞑想を
している修行者が多かった中、ルアンポー・ティアン師は
シンプルに心と体の動きを観察する(気づく)瞑想を続けたようです。
そうしたところ、家を出て間もなくの1957年8月11日の早朝、
心は「完全なる苦の消滅(大悟)」にいたったといいます。
家を出て、わずか数日のうちの出来事です。
46才になる年。
驚くような話しなのですが、
ルアンポー・ティアン師は「智慧」だけで悟る
「慧解脱者(乾観者)」なのでしょう。
しかも清浄道論にも基づかず、心と体の観察のみで悟っています。
禅と同じですね。
いわゆる禅定を経由しないで「智慧(観察)」のみで悟る道のりです。
しかも数日で悟っていますので「頓悟(とんご)」です。
もっとも、頓悟が起きる下地(波羅蜜)があったのではないかとも思います。
で、こうしたご経験から、後年「チャルーン・サティ」を考案されて、
禅定を作ることもなく、
清浄道論のような細かいステップを設けることなく、
またラベリングもすることなく、
シンプルに心と体の動きを観察するアプローチを
提唱されたのではないかと思います。
禅定を求めないアプローチが、ルアンポー・ティアン派の特徴となるのも、
始祖の「慧解脱」によるご経験に基づいているからなのでしょう。
しかしながら智慧だけで悟る「慧解脱者(乾観者)」のほかに、ブッダがたどった王道となる禅定と智慧の両方で悟る「倶分解脱者(奢摩他行者)」もあります。また信じることを貫いて悟るバクティ型の「信解脱者」もあります。
テーラワーダ仏教には、それぞれの機根(慧根、定根、信根)に応じた3つのアプローチ(道)があります。
ルアンポー・ティアン派は智慧(慧根)による
「慧解脱者」のアプローチ(道)ということですね。
それにしてもルアンポー・ティアン師は、正式に出家することもなく、
特定の師につくこともなく、数日の間に、
自力で悟ったというのは驚きです。
まさに「無師独悟」。
天才です。
波羅蜜と智慧が大変豊かな方だったことがうかがえます。
その後、ルアンポー・ティアン師は家に戻り、
約3年近く在家のまま、自分が体験したことや
その方法を家族や親戚に教え伝えています。
やがて、より多くの人を教化するために、
1960年2月3日、ようやく正式に出家して比丘となっています。
49才の年。
人生の晩年近くになって正式に出家です。
しかも「完全なる苦の消滅(悟り)」に至ってからの出家です。
何か順番が逆になっている感も受けますが、
いろんな意味で破格であり天才的な方だと思います。
ルアンポー・ティアン師は、大変異色の比丘でして、
在家時代に瞑想修行を続けて、仏教の活動を行い、
波羅蜜(徳)を重ねてきたとはいえ、在家のまま家を出て、
わずか数日で「完全な苦の消滅(悟り)」に至るというのは、
天才としかいかいいようがありません。
またお悟りになってから正式に比丘になるなど、
破格のご経歴といった感を受けます。
すごいですね。
ちなみに、ルアンポー・ティアン師は、
お悟りになってから「チャルーン・サティ」を考案されています。
「気づきの開発」ですね。
チャルーン・サティは、ルアンポー・ティアン師ご自身の智慧による解脱
といった体験に基づいて生み出された瞑想方法なのでしょう。
深い慮(おもんぱか)りがあるのではないかと思います。
人々を導き、後進の育成にも力を注いだご様子が、
瞑想方法の考案といったことからも伺い知ることができます。
異色の経歴の比丘と言ってよいほどのルアンポー・ティアン師。
しかしながら、その背景には、極貧や差別が横行する
厳しい環境の中で育ってきたことも
何か関係しているのではないかと思います。
ルアンポー師の中に「消え去ることのなかった怒り」とは、
こうした不遇な環境と関係があったのかもしれません。
ルアンポー師の、その穏やかな表情とは裏腹に、
40代半ばまで感じ続けて「苦」や「怒り」。
しかし、心と体をシンプルに観察し続けて、
「完全なる苦の消滅」に。
Luangpor Teean V3(with English translation)
Developing SelfAwareness A (English)
Developing SelfAwareness B (English)
ルアンポー・ティアン師のこうしたご経歴というのは、
日本ではあまり知られていないのではないかと思います。
在家で悟った方ということになるのでしょうが、
こうした傾向は、在家のカンポン・トーンブンヌムもそうでして、
社会に歩み寄るプラユキさんの姿にも、
どことなく重なってまいりましょうか。
あっという間に大悟されていますので、
案外スルーされがちなのかもしれません。
ルアンポー・ティアン師は、
その後、1982年71才の年に、
胃がんと診断されるものの精力的に活動をされ、
1988年9月13日午後6時15分、クティでお亡くなりになります。
享年77才。
名前は知られていながらも、その生涯はあまり知られていない
ルアンポー・ティアン師ではないかと思います。
在家時代にお悟りになられ、
「気づきを開発」する「チャルーン・サティ」を考案された
ルアンポー・ティアン派の始祖であり、
波羅蜜が豊かな「天才」だったように思います。
【参考・引用元】
วัดป่าสุคะโต - หน้าหลัก
http://www.pasukato.org/luangporteean.html
Dhamma Teachings of Luangpor Teean
https://buddhaleelamahasati.wordpress.com/
Luang Por Teean and His Dynamic Meditation
http://paulgarrigan.com/luang-por-teean
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